CDの販売数が低下傾向にある音楽業界や、書籍や雑誌の販売数が低下傾向にある出版業界において、マーケットに何が起きたのでしょうか?

それはおそらく、音楽や小説、情報を楽しむ環境やツール、経路などにおいて変化が起きたということです。私たちは、好きな音楽を聴きたいですし、おもしろい物語を読みたいですし、良質な情報を必要としています。その欲求において変化はなく、手段が変わってきたということだけです。

ゆえに、そのように考えると、音楽業界や出版業界が担う役割は重要で、これまで関わってきた既存の企業は顧客のことを良く知っている専門家として、引き続き各々の業界においてチャンスを持っているように思います。

顧客が人間である限りは、感動を求め、知を欲します。業績が落ちた時、顧客の気持ちや心などの本質が変化したのか、それとも、環境やツールなどトレンドに変化が起きただけなのかということを認識し、すばやく本質を捉えるための準備をすることが賢明であるように思います。

例えば、個人の時代が来たと言われていますが、マーケットで求められる価値の質はこれまでと等しく求められます。インターネットとITのおかげで、個人が発信しやすい環境が整ったというだけで、個人の感性やセンスが急激に高まったというわけではありません。個人の発信物も企業の発信物もマーケットでは等しく評価されます。なぜならば、顧客の価値評価において、発信者が個人であるのか企業であるのかということに関連性はないからです。

このように、環境やツールが変化することは頻繁に起きますが、本質は変わらないことが多くの場合です。そこを見極めれば、多くの場合、ピンチではなくチャンスであるということに気がつきます。